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北京2008


見どころ

1. 今大会の目標、チームの特徴

団体戦は男子6位、女子5位という位置づけである。今年3月の世界選手権団体戦で、男女とも団体銅メダルを獲得している。

オリンピックは3位決定戦もあってさらに厳しい戦いであるのは事実であるが、今大会の試合方式に日本が得意とするダブルスが含まれることもあり、男女ともにメダルを現実的な目標にできる好位置につけている。

日本がまず第1ステージで狙うのは、4チームで行われるリーグ戦を1位で通過すること。悪くても2位を確保しメダル争いの第2ステージに進出する。

対戦国は8月7日に予定されているドローで決まるが、女子はランキング5位が予想され、第1ステージではランキング3・4位の韓国か中国香港と同組になると予想されている。

今回の北京で採用される団体戦の形式で行われた5月のフォルクスワーゲンオープン荻村杯で韓国と対戦して2−3で敗れているが、作戦次第で勝つ可能性もあった。日本の場合は相手によってダブルスを平野早矢香・福岡春菜・福原愛の3人で組み替えが可能な自由自在な布陣を取れるというところに強みがある。

一方、日本が男子はランキング6位で、第1ステージはドイツか中国香港と同組になると思われるが、共に勝つ可能性は持っている。ドイツは、シングルスの世界ランキング7位のティモ・ボルがいてシングルス2試合を取る可能性が高い。よって、日本としてはボルに2点取られるケースを想定して、ダブルスと残りのシングルス2試合を取る作戦も立てられる。ともかく、水谷隼・岸川聖也のダブルス、韓陽の2点使いで勝負する形である。

男子も、まずは第1ステージ突破が目標であるが、メダルトーナメントに進めばランキング2位の韓国にはアテネオリンピック王者の柳承敏と、'05年世界選手権3位の呉尚垠はいても、今は彼らも下り坂になってきているだけにチャンスはある。

シングルスは日本選手6人のうち、福原愛以外は5人全員がオリンピック初挑戦という顔ぶれである。参加者中のランキングで福原愛の9番手というのが最高であり、現実的には日本選手全員、入賞(ベスト8以上)が最初の目標となる。しかし、1回負ければそこで終わりのトーナメント戦では何が起きるかわからない。上位を倒す力を持っている選手が日本には多く、日本選手がメダルを獲得する可能性もある。活躍を期待したい。

2. 日本チームの特徴、有力選手

男子団体:(韓陽、水谷隼、岸川聖也)
ダブルスは水谷・岸川ペアでほぼ固定されるほどレベルが高い。2007世界選手権ではシングルス世界ランクトップ10に入る二人が組んだ中国ペアに完勝し、準々決勝進出。準々決勝でも今回の代表になっている王皓・王励勤のペアに2−4と健闘した。また、韓陽のシングルスは今年に入っても安定した強さを見せている。

女子団体:(福原愛、平野早矢香、福岡春菜)
ダブルスを3名で自由に組み替えることができ、シングルス2点に出場する選手も誰が出ても良い。格上選手を倒す可能性を秘めた福原、欧州出身選手にこの1年無敗の平野、シンガポール・欧州に強い福岡と相手に合わせてフレキシブルに対応できる。

男子シングルス:韓陽、水谷隼、岸川聖也
6月の世界ランキングでトップ20に入っている選手に対するこの1年の勝ち数を調べてみると、韓陽3勝、水谷6勝、岸川1勝である。韓陽は生まれた中国でのオリンピックで故郷に錦を飾れるか。モチベーションは極めて高い。また、水谷はこのオリンピックで大番狂わせを起こす力を持っている。おそらくはトップ選手達が最も当たりたくない選手である。1月の全日本とも2月末の世界選手権とも違うレベルの力を見せてくれるかもしれない。伸び盛りの選手である。岸川もこの1年で世界ランキング15位、25位の選手に勝っており団体戦のダブルスでの重要な役割とともにシングルスでも活躍が期待される。

女子シングルス:福原愛、平野早矢香、福岡春菜
6月の世界ランキングでトップ20に入っている選手に対するこの1年の勝ち数では、福原6勝、平野2勝、福岡2勝である。福原は現世界チャンピオンの郭躍(中国)をこの5月に破っている。平野は5月の荻村杯でこれまで日本選手がなかなか勝てなかった金璟娥(韓国)に完勝した。福岡の2勝はシンガポールの主力2名に対する勝ち星である。順当な成績ではベスト16といったところであるが、上位進出も十分期待できる。

3. 他国の有力選手

団体戦は男女共に地元中国が圧倒的な優勝候補である。また、女子はもしかすると団体のメダリスト全員が中国生まれになる可能性もある。決勝へは他のどの上位チームが進出してもおかしくないが、途中で中国と当たらないというくじ運が必要である。

シングルスについても男女共に中国選手3名を中心にメダル争いが行われる。メダル争いという意味では中国選手にとっては最大のライバルは中国選手である。

男子は世界ランキング1位の王皓(中国)がアテネオリンピック男子シングルス銀メダリスト、世界ランキング2位の馬琳(中国)が2007世界選手権男子シングルス2位、世界ランキング4位の王励勤(中国)が現世界チャンピオン。王皓はアテネでは決勝に進出しているが世界卓球選手権大会では決勝進出すら一度もない。馬琳は世界選手権では3度決勝に進出しているものの優勝はなく、アジア競技大会、アジア選手権でも優勝はなく、アテネではベスト16で姿を消している。一方、王励勤は世界選手権では3度優勝しているもののオリンピックは2度の出場で前回の銅メダルのみである。3者の過去4年の相互の対戦成績を見ると、馬琳vs王皓10勝5敗、馬琳vs王励勤8勝8敗、王皓vs王励勤7勝8敗となっている。誰が優勝してもおかしくない状況であるが、地元開催がモチベーションを上げる材料となるか、プッシャーとなるかが勝負の行方を左右しそうである。ちなみに男子シングルスでは時の世界チャンピオンが過去5回の大会でいずれも金メダルを逃している。

女子については、前回アテネで初めてオリンピックに参加し、シングルス・ダブルスの2冠に輝いた張怡寧(中国)が優勝の最有力候補である。現世界チャンピオンの郭躍(中国)は前回のアテネオリンピックではシングルスのメダルを逃しており今回金メダルを狙っているが、決勝で張怡寧との対戦になれば過去1年の対戦成績で0勝3敗と分が悪い。

おそらくは最後のオリンピックとなる王楠(中国)も郭躍とはこの1年で1勝1敗の成績であるが、張怡寧とは1勝3敗。やはり張怡寧に分がある。この1年で張怡寧に勝利した選手はオリンピック参加選手中では王楠の1回と馮天薇<フォン・ティエンウェイ>(シンガポール)の1回、この2名だけである。

その他特質すべき事項

話題性のある選手

【連続出場】

卓球がオリンピック種目となったソウルオリンピックが1988年。福原愛が生まれた年である。そのソウルオリンピックから北京を含め6大会全てのオリンピックで代表になっている選手がいる。

・ヨルゲン・パーソン(スウェーデン)
1966年4月22日生まれ42歳。世界ランキング31位。
1991男子シングルス世界チャンピオン他世界選手権で金5、銀3、銅3を獲得。

・ゾラン・プリモラッツ(クロアチア)
1969年5月10日生まれ39歳。世界ランキング30位。
ソウルオリンピック男子ダブルス銀メダリスト。1993、1997ワールドカップ優勝。

・ジョンミッシェル・セイブ(ベルギー)
1969年11月17日生まれ38歳。世界ランキング26位。
1993世界選手権男子シングルス2位。1994欧州選手権優勝。
元世界ランキング1位。1996、2004オリンピックベルギー選手団旗手。

の3名である。未だに高い世界ランキングを保っており、北京オリンピックでも上位に食い込む力を持っている。

女子で話題の選手はママさん選手の元世界選手権金メダリスト、倪夏蓮<ニー・シャーリエン>(ルクセンブルク)があげられる。世界ランキング上位者から選ばれる20名の選手の20番目の選手として北京オリンピック代表権を獲得したが、これはITTFが中国香港選手2名を世界ランキング推薦リストから外す決定をしたことによる繰り上がりでの資格獲得であった。倪夏蓮はシドニーに続き2度目のオリンピック出場であるが元世界選手権金メダリストがオリンピックにそれほど出場していないのは、彼女が1963年7月4日生まれ。大会時45歳のベテランで全盛期には卓球がオリンピックの種目でなかったからである。1983年世界選手権東京大会では団体金メダル、混合ダブルス金メダル、女子ダブルス3位と3つのメダルを取り、1985年にも女子ダブルスで銀メダルを獲得している。その後ルクセンブルクに移住し、2002年に欧州選手権2冠となったあと、出産など5年のブランクに入り、2007年に復帰すると欧州選手権女子シングルス準優勝、2008年の世界選手権広州大会でも第2ディビジョンながら15勝1敗と圧倒的な成績をおさめた。左利きペンホルダー粒高ショート主戦型ながら極めて攻撃的なスタイルは強豪を倒す可能性を秘めている。

【中国出身選手】

卓球競技は今回に限らず中国生まれの選手が非常に多い。1NOCの最大枠は男女各3名であるが、アテネでシングルスに参加した選手のうち中国生まれの選手は中国代表を含め、男子13名、女子17名であった。今回北京オリンピックでは、男子18名、女子34名と特に女子が大幅に増えており、6大陸の女子チャンピオンが全て中国出身選手という状況である。3月の世界選手権で国際卓球連盟が「世界選手権における帰化選手の参加に制限を設ける」案を可決したのもこういった現状が背景にある。一方でこれは中国の卓球競技のレベルの高さ・層の厚さを如実に表すものとも言える。

団体戦においても、女子16チーム中、選手3名全員が中国出身のチームが5。3名中2のチームが6あり、中国出身選手を含まないのは日本を含め4チームのみである。団体戦参加48名中28名が中国出身。一方男子も代表3名全員が中国出身という強豪チームが3つある。もしかすると4種目全てのメダルを中国出身選手だけで取ることもあるかもしれない。

日本代表成績

男子シングルス女子シングルス男子ダブルス女子ダブルス
4位入賞 星野美香/石田清美(1988)
5位入賞
(ベスト8)
小山ちれ(1996)
小山ちれ(2000)
渋谷浩/松下浩二(1996)小山ちれ/東童多英子(1996)
梅村礼/藤沼亜衣(2004)
9位
(ベスト16)
小野誠治(1988)
松下浩二(1996)
松下浩二(2000)
田﨑俊雄(2000)
星野美香(1988)
星野美香(1992)
山下富美代(1992)
小西 杏(2000)
梅村 礼(2004)
藤沼亜衣(2004)
福原 愛(2004)
偉関晴光/田﨑俊雄(2000)
田﨑俊雄/鬼頭明(2004)
小西杏/藤沼亜衣(2000)
3回戦敗退 偉関晴光(2000)
松下浩二(2004)
坂田倫子(2000)
2回戦敗退 遊澤亮/新井周(2004)
1回戦敗退 新井 周(2004)
遊澤 亮(2004)

男子シングルス女子シングルス男子ダブルス女子ダブルス
第1
ステージ
リーグ戦
敗退
斎藤 清(1988)17位相当
宮﨑義仁(1988)25位相当
渋谷 浩(1992)17位相当
松下浩二(1992)17位相当
渡辺武弘(1992)33位相当
渋谷 浩(1996)17位相当
田﨑俊雄(1996)33位相当
内山京子(1988)17位相当
石田清美(1988)17位相当
佐藤利香(1992)17位相当
佐藤利香(1996)17位相当
東童多英子(1996)17位相当
宮﨑義仁/小野誠治(1988)
9位相当
斎藤清/渡辺武弘(1988)
13位相当
渋谷浩/松下浩二(1992)
9位相当
渡辺武弘/仲村錦治郎(1992)
17位相当
田﨑俊雄/遊澤亮(1996)
17位相当
渋谷浩/松下浩二(2000)
9位相当
佐藤利香/松本雪乃(1992)
9位相当
星野美香/山下富美代(1992)
9位相当
佐藤利香/海津富美代(1996)
9位相当
坂田倫子/内藤和子(2000)
9位相当

オリンピックにおける試合方式の変遷

1988年・1992年・1996年:
シングルス第1ステージとしてリーグ戦を行い、16名が第2ステージのトーナメント戦に出場。ダブルスは第1ステージとしてリーグ戦を行い、8組が第2ステージのトーナメント戦に進出。

2000年:
シングルス第1ステージとしてリーグ戦を行い、32名が第2ステージのトーナメント戦に出場。ダブルスは第1ステージとしてリーグ戦を行い、16組が第2ステージのトーナメント戦に進出。

2004年:
シングルスは3回戦から登場するシード選手が16名、2回戦から登場する準シード選手が16名というトーナメント方式で行われた。ダブルスは3回戦シード8組。2回戦準シード8組のトーナメント方式で、同NOCのペアを同じハーフにドローする特殊な試合方式で行われた。

2008年:
ダブルス種目がなくなり、団体戦が種目として採用された。男女各16チームが4つのグループに別れ第1ステージでリーグ戦を行いグループ1・2位にメダルのチャンスあり。シングルスの試合方式は2004年と同じ。

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