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アテネ2004


スペシャルコラム

オリンピックの極意-アーチェリー -山本博選手-

青島健太さん

ロサンゼルスオリンピックの銅メダルに続いて、自身20年ぶりに銀メダルを獲ったアーチェリーの山本博選手。
今回で迎えて5回目のオリンピック。41歳になる山本選手の活躍に勇気づけられた同世代も多いことだろう。
彼自身も自分を「中年の星」と呼び、年齢も意識しながら戦ってきた。
しかし、そんな彼が決勝を終えて言ったひと言は、世代を越えて味わうべき言葉だろう。
「最後の一本を、メダルに対する欲を持つことなく射(う)つことができた。それがとにかく嬉しいです」
メダルに対する欲を持つことなく矢を射る
この言葉の裏にあるのは、メダルを獲ることを意識して失敗してきた戦いの数々なのだろう。

オリンピックという舞台でメダルを狙わないアスリートはいない。
予選落ちする選手だって、ここまで頑張って来れたのは、いつかメダルを!という夢と希望があるからだ。
しかし、山本選手はその憧れのメダルが近づいた戦いの中で、メダルを意識することなく弓を引けたというのだ。

勝ちたいのに、勝つことを意識しない。
この矛盾する心理状態は、いかなることで叶えられるのか。
その状態を山本選手はこう話してくれた。
「正直言って今日の試合のことは何も覚えていないんですよ」
緊張してのことではない。観客にも手を振りながら、余裕のある試合運びをしながらのことである。
矛盾を叶えるのは、究極の集中。
「恥ずかしくない矢をしっかり射る。唯一そのことだけを考えていました」

だれよりも勝つことにこだわり、誰よりも長く競技に携わってきた男が、オリンピックの舞台でたどりついた境地。 「メダルを獲ろうと思わずに獲る」 これぞオリンピックの極意といえるだろう。

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