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アテネ2004


代表選手選考会・出場権獲得レポート

レスリング
ヘルシンキ大会から12大会続けてメダルを獲得している男子と
4階級全員が世界王者という布陣の女子。アテネ大会に大いなる期待!

4月12、13日の2日間、男子のオリンピック最終選考会を兼ねて全日本選抜選手権が行われ、日本が出場権を獲得している9階級のうち、まだ代表が決まっていなかったグレコローマン(以下G)の4階級、フリースタイル(以下F)の2階級で新たに代表選手が決定した。その顔ぶれは、いずれも、世界選手権および世界最終予選で日本の出場資格を勝ち取ってきた選手たちである。

G74kg級は、シドニー大会69kg級銀メダリストの永田克彦(新日本プロレス(株)職員)が、4カ月前の全日本選手権決勝で敗れた相手・菅太一(警視庁)にリベンジを果たし、連続メダルをかけたアテネの地に向かう。

試合は、「互いに手の内を知り尽くしているなかで鍵を握る」と踏んでいたパーテレポジションから確実にポイントを重ねた永田が、息詰まる攻防を制した。

永田は、「69kgから74kgに階級が変更されたことに伴う肉体改造も、8割方完成した。シドニーの頃に比べると、全ての面でレベルアップしていると実感している。あとは、手足が長く瞬発力のある外国人選手の良さをいかに殺せるかどうか。さらにスタミナを付け、前回よりも良い色のメダルを持って帰りたい」と本番に向けての決意を語った。

G55kgは豊田雅俊(警視庁)がアテネ行きを決めた。勝てば決定という本戦決勝では敗れはしたものの、プレーオフではライバル安原隆(自衛隊)を退けた。

G60kg級は、笹本睦(綜合警備保障)が圧倒的な強さをみせてシドニー大会に続く代表に。「前回(8位)は試合内容がよくなかった。今度はしっかり仕上げて、メダルをとりたい」と、その眼はシドニーで敗北を喫したブルガリアの世界王者を見据えている。

また、G84kg級は、「日本で圧勝できなければ、外国人には歯が立たない」という言葉通りの内容をみせた松本慎吾(一宮運輸)が、4年越しの思いを叶えて日本代表となった。3人ともが得意にしているのは、リフト技。本番でも、豪快な投げが見てみたいものだ。

F60kg級は井上謙二(自衛隊)がオリンピック初出場を決めた。「外国人選手と戦っても、相手が小さく見えるから有利だと思う」という、この階級にしては長身で長い手足を持っている。その分、下に飛び込まれる危険も大きいが、逆に、そこを利用してのカウンターの技術を和田貴弘コーチと磨いているので心配はない。世界経験が少ないということでダークホース的存在だが、本番でも金メダルにかなり近いとみる。

F84kg級は、1996年アトランタ大会代表の横山秀和(秋田商高職員)が、2大会振りに返り咲いた。グレコに転向して挑んだ4年前の敗戦の悔しさを経て、教職に就きがなら再び夢舞台に立つチーム最年長33歳の苦労人。「決して恵まれているとはいえない競技環境でも、コツコツと頑張ればできるというところを見せたい」と競技生活の全てをかけて臨む。

日本の男子レスリングは、1952年ヘルシンキ大会以降、参加した12大会全てでメダルを獲得し続けている。これは、日本の競技団体のなかでは最長の記録だ。しかし、金メダルとなると、1988年ソウル大会が最後。アテネでは、レスリング界の主役を女子に明け渡してしまわないよう、ユニフォームの仁王象にも負けない"気焔万丈"の戦いで意地を見せてもらいたい。

同じ日に女子48kg級のプレーオフも行われ、伊調千春(中京女子大3年)が中京女子大の後輩・坂本真紀子(中京女子大1年)を3−0で破り、オリンピック出場を決めた。伊調は、坂本が得意にしているタックルを低い姿勢で悉くかわすと、0−0でクリンチからスタートした第2ピリオド30秒過ぎに、場外際の投げで3ポイントを獲得。あとは、持ち前の守りの堅さで逃げ切った。全日本選手権の勝利で先に王手をかけながら、2カ月前のクイーンズカップでは坂本に敗れた。

以降、63kg級の代表である妹・馨の全面的なアシストを得てこの日を迎え、ついに夢であった姉妹揃ってのオリンピック出場を決めたのだ。攻撃面で課題は残るが、心身ともに過酷な日々を乗り越えた経験は、何ものにも代え難い自信となるに違いにない。 これで女子は、4階級全員が世界王者という布陣となり、全階級金メダルも見えてきた。

Text:中川和彦 Photo:AFLO SPORT

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