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アテネ2004


代表選手選考会・出場権獲得レポート

バレーボール
2大会ぶりの出場を果たし、メダル奪取に燃える!

その瞬間、東京体育館は歓喜の渦に包まれた。第28回オリンピック競技大会(2004/アテネ)の出場権をかけた最後の戦い、5月14日の世界最終予選大会5日目、対韓国戦。日本リードで迎えたマッチポイント、佐々木みきのサーブが相手コートに落ち、ホイッスルが鳴ったそのとき、遂にアテネ行きが決定。大歓声の中、選手たちは飛び上がり、全員がコートで抱き合った。

大会初戦、2002年世界選手権の覇者・イタリアをフルセットの末下した全日本チームには勢いがあった。この大会で最上位チーム、または最上位以外のアジア最上位、それ以外の上位2チームに入れば出場権を獲得できるという条件は、今の全日本の力を持ってすれば、それほどむずかしくはなかっただろう。日本女子バレー史上で初めて出場を逃した前回のシドニー大会から4年、ようやくあの悪夢が払拭されたのだ。

シドニー大会出場をかけた前回2000年の最終予選では、善戦したものの8チーム中6位。まさかの結果だった。その後はオリンピック出場を逃したショックからなかなか立ち直れず、バレー界全体が暗闇に迷い込んでしまったかのようだった。かつて日本のお家芸と言われ、晴れの時代が長かった競技ではあったが、アトランタオリンピックでは史上最低の9位。それだけに、ファンはもちろん、周囲の落胆や焦りも大きかった。

そしてアテネ行きをかけた最終予選まで約1年という2003年2月、女子チーム再建のために選ばれたのが、柳本晶一監督だった。就任会見で柳本監督は、まだ一度も試合をしていないにも関わらず、大胆にも「必ずオリンピックに行く」と宣言。周囲の反応をよそに、チーム作りに着手した。

3月20日から行われた初合宿には、年齢など関係ない完全な実力主義で代表選手を選出、全日本史上最多の32名を招集した。チームの柱には、96年のアトランタ以来代表からはずれていた吉原知子を、主将として起用。最年長ということばかりがクローズアップされたが、Vリーグで所属したチームをすべて優勝させてきた実力と、勝利への思いを全面に出す姿勢は、新生全日本になくてはならなかったのだ。また、実力はまだ未知数だった10代の新鋭・大山加奈、栗原恵を選出、日本久々の大型アタッカーをメンバー入りさせた。他にも、4年前の屈辱を味わったセッター竹下佳江やライト高橋みゆきといったメンバーも選出し、経験と若さ、パワーを融合したチームを作り上げたのだ。

まず監督がめざしたのは、「全日本をトップアスリート集団にすること」。立場はアマチュアであってもプロ意識を徹底させ、選手として自立心を育てるための精神的な改革を進めたのだ。なかでも「柳本流」とも言えるのが、あえて選手同士を競わせ、競争心をあおるやり方だ。試合を重ね、次第に勝つことへどん欲になっている選手たちにとって、試合に出られないことほど悔しいことはない。その成果が見え始めてきたのが、2003年11月のワールドカップだった。

アテネへの切符をかけた、最初の大会でもあるワールドカップは、3位入賞までの国が出場権を獲得できる大一番。結果は7勝4敗の5位と、この時は切符を逃してしまったのだが、全日本が強くなっている、という印象を、前回・今回と見た人は間違いなく思ったはずである。アジアの宿敵・韓国やヨーロッパ第2位のトルコ、鳥人王国・キューバに競り勝った試合は、彼女たちの成長を感じるのに十分の内容であったし、と同時に、アテネ行きを予感させる力と気迫が、選手全員にみなぎっているようにも見えたのだ。

そして遂に切符を手中にした世界最終予選日本大会。観客席は、連日大勢のファンで埋め尽くされ、熱気に満ちていた。選手たちも集中したいい表情だ。大会4日目まで全勝できていた全日本、アテネ行きはほぼ確定していたとはいえ、対韓国戦で勝利したその瞬間、選手たち、特に竹下や高橋、成田らは涙を流し、喜び合った。就任後わずか1年で自身の宣言を実現した柳本監督は「次はメダルを取りに行きます!」と力強くアピールし、会場をさらに沸かせたのは記憶に新しい。

さて、アテネ本番まであとわずか。全日本チームは国内合宿に続きヨーロッパ遠征、ギリシャで本番を想定した親善試合などを行い、いよいよ迫った大舞台に照準をあわせてきている。予選ラウンドでは6チームが2リーグにわかれて総当たり戦を行い、上位4チームが準々決勝へ進出する。日本のいるA組にはブラジル、イタリアといった強豪が、勝ち進めば世界王者・中国、アメリカ、ロシアが待っている。フィジカル、メンタルともにパワーアップした全日本チームは、監督・選手共にメダルを目標に気持ちを高めているはずだ。試合は、8月14日に幕を開ける。

Photo:AFLO SPORT

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