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アテネ2004


代表選手選考会・出場権獲得レポート

水泳・競泳
シビアな選考基準を突破した精鋭揃いの競泳陣!

オリンピック代表選手選考会を兼ねた競泳の日本選手権が、4月20日(火)から25日(日)まで東京・辰巳国際水泳場で行われ、男子9名、女子11名、あわせて20名の日本代表選手が決定した。今回の代表選考については、非常に高いハードル設定がなされた。それは、過去3年間の世界ランキングから1カ国2人の最高記録を調べた上でベスト16に該当するタイムをオリンピック派遣標準タイムとし、そのタイムを決勝レースで突破した上で2位以内に入らなければならないというもの。結果、前回大会よりも1人少ない代表選手数となったが、少数精鋭でメダルを狙える選手が増えたということになる。

20人のなかで、男女通じて最も金メダルに近いのは男子平泳ぎの北島康介(日体大4年・東京SC)だ。

昨年の世界選手権で100m、200mとも世界新記録による金メダルを獲得している。今大会ではやや調子を乱して自己の世界記録樹立はならなかったが、200m決勝でみせた伸びやかで力強い泳ぎは“さすが”と思わせるものがあった。

「本番では、世界記録保持者とか世界王者とかいうことを全て捨てて、自分の力を全部出す気でいかないといけない。もう一度初心に戻って、オリンピックという大きな舞台できちんと戦えるように力作りをしていきたい」と語る北島は、決意も新たにアテネに臨む。

激戦となった女子背泳ぎは、100m、200mとも中村礼子(日体大4年・ヨコハマSC)が制した。これまでは、大舞台で結果を出せないという勝負に弱い面もみられたが、昨年10月から北島らを指導する平井伯昌コーチのもとで練習を重ねた結果、レースに臨むにあたっての自信とスピードを身につけたことが今回の結果に大きくつながった。

「本番では、予選から日本記録を出していかないといけない。後半まで泳ぎきる持久力もさらにレベルアップし、金メダルを持って帰りたい」と中村は言った。

この種目は、前回のシドニー大会でも日本勢が2つのメダルを獲得しているが、惜しくも金メダルには届かなかった。100mの稲田法子(セントラルスポーツ)、200mの寺川綾(近畿大2年・イトマンSS)とともに、金メダルへの期待は高まる。

圧巻だったのが、男子背泳ぎの森田智己(日大2年・セントラルスポーツ)だ。オリンピック種目ではない50mを含め、3種目全てで日本記録を塗り替える力泳で、初のオリンピック出場を決めた。169cmと小柄ながら、「鉈のように水を切り裂く泳ぎ」(鈴木陽二コーチ)は、センス抜群だ。

2001年福岡世界選手権あたりまでは"テンポの泳ぎ"であったが、"ストロークの泳ぎ"に変えたことにより、天性の柔軟な筋肉も手伝って腕・手の使い方が格段にアップ。また、「脚筋力をつけ、一点に入水する技術を強化した」(鈴木コーチ)ことで、世界のトップレベルと遜色のないスタートができるようになった。「本番での目標は、100mが53秒台前半、200mが1分57秒台」と言い切る森田。そのタイムを出せたなら、メダルも確実だ。

その他、男子では、個人メドレーの三木二郎(日大3年・東京SC)がスランプを乗り越えて200m、400mともに日本新記録で優勝し、松田丈志(中京大2年・コナミスポーツ)が1500m自由形の日本新記録とともに200mバタフライでは世界選手権銀メダリストの山本貴司(近畿大職員・イトマンSS)を破って優勝し、代表の座を射止めた。また、女子では、400m個人メドレーの天野美沙(桐蔭学園高3年)が、後半の平泳ぎと自由型で抜群の強さを発揮し、高校生では唯一の代表入りを果たした。いずれも伸び盛りゆえ、アテネ大会が楽しみだ。

世界の常連も黙っていない。バタフライ女子では100mで大西順子(コナミスポーツ)・200mで中西悠子(近畿大職員・枚方SS)という2人の世界選手権メダリストが力を見せつけ、自由形女子では山田沙知子(関西大4年・コナミスポーツ)が昨年の不振を忘れさせるような泳ぎで代表を掴み取った。

「1996年のアトランタ大会では、好調だった選考会を再現をしようと臨んで惨敗を喫した。2000年シドニー大会は、チャレンジャーの気持ちでとにかく自己ベストを出そうと臨み、4個のメダルを獲得した。今回は、両大会を踏まえた上で、前回を上回るメダルを狙いたい」と語る上野広治ヘッドコーチ。山本貴司キャプテン以下、オリンピック3回出場のベテランから高校3年生の若手まで多士済々のメンバーが揃った今回の代表チームなら、その目標を達成してくれることだろう。

Text:中川和彦 Photo:AFLO SPORT

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