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ジュニア作文オリンピック

初めてもぐった時

東京都・慶應義塾幼稚舎4年 市橋里紗

(わぁ、きれい。)と私は心の中でつぶやきました。
あーぁ。やだなぁ。また水泳かぁ。
週一回の水泳の日がおとずれる度に私はそう思っていました。その時は水泳教室に行くのがいやでいやで仕方がありませんでした。何故、いやだったか。理由は、水がこわい、という事と息が苦しい、という事です。
その時の目標はもぐる、という私にとっては難関のうちでした。もう、二年生なのに……。と、つい、あせってしまいました。
私はもぐれないので、水泳教室では一番下の組のピンク組。なんとかしてもぐりたいと思っていたので、家でも息をとめる練習をしていました。
水泳教室でも、先生は「里紗ちゃん、無理しなくてもいいよ。」と言ってくれていました。先生の声を聞くと、もぐる気がしなくなってしまいます。もぐりたいけど、やっぱこわい、という気持ちがうずをまいていました。これではきりがありません。(来週はもぐろう。)と思っていても、(やっぱり、来週。)となってしまいます。
学校でも、1、2年生はお遊びだけど、みんなもぐる事はできます。
水泳教室でも顔をつける事は出来ますが、もぐる事は出来ません。いつも、(もぐってみよう。)とは思うのですが……。顔をつけるという事は出来ますが、もぐる事が出来ないのです。いつも、いざ、もぐる時に足がすくんで、きんちょうしてしまうのです。私の他の子たちはみんな、もぐれます。みんな、水泳を楽しんでいるので、私だけとり残されたような気分です。だから、水泳がきらいで、(水泳なんかなければいいのに。)と思った事も度々ありました。
そんなある日、もうすぐ夏休み、という頃です。私は夏休みまでにもぐれるようになるという事を目標にしていました。いつものように水泳教室に行って、練習が半分ほど、進んで、もぐる練習になった時です。先生に「里紗ちゃん、どうする?」と聞かれました。私はもう迷わず、「やってみます。」と答えました。そして、みんなもぐっていき、最後に私の番になりました。
大きく息を吸って、いきおいよく、水しぶきをあげて、もぐりました。目を開けると、サファイアブルーの水面が見えて、光で宝石のようにキラキラ光っていて、何とも言えないほどきれいでした。
水から、上がったら、もぐったんだ、という、感覚が湧いてきました。そして、みんなに口々にほめられました。言葉では言い表せないほど、嬉しかったです。
私はもう水がこわくありません。なぜって、私はもうもぐれるのですから。