MENU ─ オリンピックを知る

オリンピック大会組織委員会の環境保全活動

第25回オリンピック競技大会(1992/バルセロナ)  
IOCや各国・地域のNOCと選手たちが「地球への誓い(EarthPledge)」に署名。オリンピック大会において地球を保護することを公約し、オリンピックにおける環境対策のスタートとなった。

第17回オリンピック冬季競技大会(1994/リレハンメル)  
「環境に優しいオリンピック」をスローガンに揚げ、アイスホッケーの会場を岩をくり抜いた中に建設したり、スピードスケート会場にバイキング船をモチーフにした木製の屋根を乗せたりするなど、省エネルギー性や地域の自然や伝統をアピールする他、アルペンコースの会場がふもとの道路から見えないようにするなど、景観保護にも配慮した。
またジャガイモを原料とした食器を使用、閉幕後はボランティアが植栽を行ない、グリーンな大会と呼ばれた。

第26回オリンピック競技大会(1996/アトランタ)  
IOCにスポーツと環境委員会が設置され、1回目のスポーツと環境国際会議が開催された後、初めてのオリンピック。  
アトランタ市はオリンピック開催中、地元住民の自家用車の使用を避け、公共交通機関の利用を推奨した。

第18回オリンピック冬季競技大会(1998/長野)  
長野冬季オリンピック大会組織委員会は基本理念の1つに「美しく豊かな自然との共存」を挙げ、環境保全に取組んだ。
開会式では、地表に落ちて水分に触れると分解する「ハト風船」を、またオリンピック村のレストランではリンゴの搾りかすを利用した紙食器を使用する等、環境への配慮を分かりやすい形で実行した。
施設建設では極力既存の施設を活用し、自然環境の改変が必要な場合は、大会後復元を図った。森の再生には、その土地に最も適した樹木の苗をビニールポッドの中で育てたものを植える「幼苗植栽手法」を採用。スパイラルでは「表土復元工法」が用いられ、速やかな緑化を可能にした。またアルペン競技・滑降のコースは一部国立公園内を通過するため、スタート地点を変更し、コースの一部を選手が自らジャンプして飛び越える方法を取り、クロスカントリー競技場では硬雪剤を使わず、雪の下に畳を敷いてコースを維持した。  
大会運営には日本が開発に先鞭をつけたハイブリッド自動車と天然ガス自動車を使用して地下資源の保護を図った。

第27回オリンピック競技大会(2000/シドニー)  
1999年にオリンピックムーブメンツ・アジェンダ21採択後最初のオリンピック。オリンピック史上もっとも緑あふれる大会を実現した。
シドニー大会組織委員会(SOCOG)は、「環境意識の向上」「方針と実践の改善」「良い手本を示すことによる証明と教育」「再生と建設」の4つの領域から環境に取組み、次のことを実行した。  オリンピック・ランドケア:オリンピック開催までに、オーストラリア国内に200万本以上を植林した。
オリンピック環境フォーラム:環境団体とSOCOGと政府機関が定期的に会合を持ち情報交換し、オリンピックの環境的利益を最大化する方法を話し合った。
統合廃棄物管理ソリューション:オリンピック期間中の廃棄物管理のビジョンと基準を設定し、大会終了後も引き続き幅広く使用されることを目的とした。
開催地環境プラン:あらゆる開催地のプランニング、管理、運用に環境的考慮事項を含めるための包括的指導ツールを作成。
交通イニシアチブ:低公害車を使用し、交通による環境への悪影響を大幅に削減できた。また公共交通機関の利用を大幅に増加させた。  
スポンサー環境ネットワーク:スポンサー、サプライヤー、SOCOGが協力し、環境に配慮した製品の作成、既存製品の変更、環境プランや方針の実施の援助を行った。
エネルギー政策:エネルギー管理イニシアチブをサポートし、必要な運営基準を遵守した。選手村はこのエネルギー基準により、現在世界で最も太陽電池を使用する郊外地域となっている。
温室効果挑戦プログラム:オーストラリア連邦政府のプログラムに参加し、大会の温室効果を測定し、温暖化ガス排出削減措置を導入。
緑と金の木プログラム:金メダリスト全員に、ユーカリの種が埋め込まれたカードを送付。母国で植えてもらうことにより、栄光の記念と生きた環境メッセージとなった。  
包装と食器の仕様:廃棄物の流れの中身をコントロールし、廃棄物量を削減。

第19回オリンピック冬季競技大会(2002/ソルトレークシティー)  
オリンピック憲章に「環境」が加わってから初めて開催地に選ばれた都市として、環境保全と改善を目的に多くのプログラムを策定した。  
ゼロ・エミッション:排気ガスをゼロにすることを目標とし、大会期間中の予想排出エネルギー量を数量化。企業から寄付された未使用の排出権を使用することにより、大会の排気ガスを相殺した。  
大気質プラン(クリーナーエア):ユタ環境保全省と環境保全局と協同し、2000年8月1日に史上初の「オリンピック大気質プラン」を発令。圧縮天然ガス(CNG)を燃料とするバスを使用、交通渋滞解消のため在宅やフレックス勤務などを推進した。  
廃棄物ゼロ:イベント運営、食品サービス、広報、情報技術の各部門が密接に協力し、包括的清掃、固形廃棄物、リサイクルプログラムを推進し、廃棄物の流れの96.7%をリサイクル、肥料化。  
エコワークス2002:水とエネルギーの節約、経済的節約につながるリサイクルを目標としたホテルとレストラン用プロジェクト。SLOCは参加ホテルに宿泊客にタオルとシーツの再利用をお願いするメッセージカードを提供、53軒以上のホテル、8500室がこのプロジェクトに登録した。  
都市の緑化:オリンピック大会開催前までに、ユタ州に10万本、世界中に200万本の植林目標を設定。「グローバル植林競争」「クールスペース2002」「ツリーコロジー」「プラント・アン・オリンピック・ファミリー・ツリー」「会場ツリー・プログラム」「キャピトル・ツリー・プログラム」と多くの植林プログラムを展開した。

第28回オリンピック競技大会(2004/アテネ)  
UNEPとATHOCの共同調印による「ゴミのポイ捨て廃止キャンペーン」を実施。  
オリンピック全会場で「スポーツと環境」の関係を訴える冊子を配付。  
アテネ大会組織委員会(ATHOC)はオリンピックとパラリンピックにおける「環境への挑戦と功績」と題した編集物の発行に同意。  
環境意識の向上を唱える公共広告を国内のテレビ放送、地下鉄や空港などに掲示した。  
マラソンコース添いにオリーブを植林。

第20回オリンピック冬季競技大会(2006/トリノ)  
京都議定書発効後、最初のオリンピック。  期間中の排出量12万トン以上と予想されるCO2の排出量を植林やエネルギー効率化事業、再生可能エネルギー事業などのプロジェクトで相殺するカーボンニュートラル計画(HECTOR計画)に取り組む。  
廃棄物処理計画では、廃棄物の68%をリサイクル、32%をエネルギー回収にまわし、廃棄ゴミをゼロにするという目標を掲げた。  
フロンを使わない冷蔵技術を活用した飲食物を販売(マクドナルドとコカコーラがUNEPとグリンピースの協力を得て、自主的に取り組み)。その他全調達物資の38%にエコラベル取得製品を採用し、会場周辺のホテルもエコラベルの認定を受けるなど、さまざまな分野で環境保全に取り組み、支援を行なった。

第29回オリンピック競技大会(2008/北京)  
北京オリンピック組織委員会(BOCOG)が掲げるコンセプトの一つとして「緑色奥林匹克(奥林匹克はオリンピック)」があった。大会前から、北京市内では「緑色奥運(奥運はオリンピック競技大会の略)」などの標語が掲げられ、北京市民の環境意識を向上する活動が各所で見られた。また、BOCOGは競技場の建設にあたり、その過程では環境に優しいグリーン建材の利用を義務づけた。
消費量の増加が予想されたエネルギー供給においては、大会期間に合わせて、中国国内最大級の天然ガスを用いる高効率な発電所が北京に建設されたほか、一部の競技場には太陽光を使用した発電システムが設置されるなど、温室効果ガス削減を目指した取り組みも行われた。

第21回オリンピック冬季競技大会(2010/バンクーバー)  
バンクーバーオリンピック組織委員会(VANOC)は、「持続可能性」というキーワードに基づいた取り組みをオリンピックの計画段階から行った。その中で、環境に配慮した試みも数多く行われ、選手村や一部の競技場では廃熱の再利用が促進された。中でも選手村の周辺では、暖房や温水に必要なエネルギーの約90%を排水処理場から出た廃熱の再利用でまかない、地域の電力とガスの消費量を大幅に削減した。
また、会場建設の際には予定地の生態系に配慮が施され、アルペンスキーの会場ではオガエルというカエルの生息地を保全する計画を導入。会場建設の際には可能な限り水路を荒らさないように努め、それが難しいと判断された場合にはカエルとオタマジャクシを40mほど上流に移す措置をとった。その後、移動させた入江ではカエルの繁殖が確認されている。

第30回オリンピック競技大会(2012/ロンドン)  
2003年にロンドンが招致に名乗りを挙げて以来、ロンドンオリンピック組織委員会(LOCOG)が重点を置いてきたのが「オリンピック史上最も環境に配慮した大会」の実現というポイントだった。まず行ったのが、オリンピック・パークなどの競技場・関連施設が集中する予定となっていたロンドン東部地区の土壌改善だった。この地区は18世紀の産業革命以来、工場、プラントなどが集中していたため、鉛、ガソリン、有毒な化学物質などによる土壌汚染が発生し、住民の不安が高まっていた。そこで、最新技術を用いた土壌洗浄装置を使用して浄化を行い、利用可能な土地に再生した。
大会準備にあたっては「ロンドングリーン・ビルド2012」という取り組みが実施され、オリンピック・スタジアムの屋根は不要になったガス管を再利用。屋内競技場となった自転車競技はほぼ100%の自然換気で、エネルギー消費を抑えるために自然光を使うなどの環境対策が施された。

第22回オリンピック冬季競技大会(2014/ソチ)  
ソチ2014冬季大会は、ロシアにおける持続可能性推進の起爆剤となり、同国初の環境価値を維持する建設や人間が引き起こした環境損傷を修復する建設に関する国家基準が法律として成立し、大会の大きなレガシーとなった。
大会施設は国際的な環境価値評価システム( BREEAM/Building Research Establishment Environmental Assessment Method)にも準じて建設され、廃棄物収集、リサイクル、環境に優しい材料の使用等の革新的な技術が取り入れられた。
また、組織委員会は、大会後に大会建設地域であるムジムタ川流域の生態系を修復するため、UNEP(United Nations Environment Programme/国連環境計画)と連携。ソチ2014冬季大会の環境持続性への誓約は、環境への影響が管理監視されていることを保証するものとなり、グリーン建設基準の策定や地域独自の生態系の保全は大会の重要な成果だけではなく、永続的なレガシーとなった。

第31回オリンピック競技大会(2016/リオデジャネイロ)  
南アメリカでのオリンピック初開催となったリオデジャネイロ2016大会では、UNEP(United Nations Environment Programme/国連環境計画)の進行により、環境NGOや社会NGOと協力し、提案された70%以上の施策を実施した。
また、リオデジャネイロの気候変動対策として、エネルギー効率の高い低炭素技術がブラジルやその他のラテンアメリカ諸国で導入され、220万tの炭素排出量が削減され、農業や工業における低炭素生産の実現可能性が実証された。
加えて、FSC(Forest Stewardship Council/森林管理協議会)、MSC(Marine Stewardship Council/海洋管理協議会)、ASC(Aquaculture Stewardship Council/水産養殖管理協議会)とのパートナーシップにより、木材や水産物の持続可能な調達を行い、約70tの認証魚が提供され、大会運営には100%認証木材が使用された。原生植生の回復や河川コースの回復等、再生への取り組みも行われ、オリンピック公園の7.3haの自然植生と共に、ゴルフコースで は44haの新たな在来植生が復元された。

第23回オリンピック冬季競技大会(2018/平昌)  
オリンピック・ムーブメントの活動の1つとして、大会による環境への影響を軽減するために新しく建設された6つのオリンピック競技施設がグリーンビルディング認証を取得し、大会のリサイクルインフラを設計した。グリーンな交通インフラの成長に向けた取り組みも行われ、電気自動車や水素自動車を活用し、大会後も地域で利用されるための電気自動車充電ステーションを設置した。
また、アジアの冬のスポーツの拠点として発展することに貢献するため、8つの施設は冬季スポーツ施設として再利用される。

第32回オリンピック競技大会(2020/東京)  
東京2020大会でのCO2削減策として、節電、既存の会場の利用、燃費の良い車両の導入等、数多くの対策を実施し、"持続可能な社会 "の実現に貢献した。
また、新型コロナウイルス感染症の影響により史上初めて延期された大会となり、無観客で大会が開催されたため、CO2排出量は80万t減少。炭素排出を減らし、残りの排出量を補償することで、カーボンニュートラルを超えることに成功した。聖火台及び一部の聖火リレートーチの燃料には、大会史上初めて、使用時に二酸化炭素が発生することなく、長時間の燃焼に適した液体水素が提供された。
さらに、日本全国から寄付された小型家電から抽出された金属を活用したリサイクル率100%でメダルを製作するメダルプロジェクトを実施し、5,000個以上のメダルに必要とされる、およそ金32kg、銀3,500kg、銅2,200kgが確保された。国民が気軽に参加できるプロジェクトを設けたことは、環境問題への関心が薄い人々への意識を向上させる一助になり、全員参加型のオリンピック実現に向けた第一歩となった。

第24回オリンピック冬季競技大会(2022/北京)  
準備期間から開催までオリンピックアジェンダ2020に準じた初めての大会であり、北京2008大会で使用された6つの既存施設を利用し、再生可能エネルギーの使用や低炭素技術の採用等、様々な手段でカーボンニュートラルを目指した。
エネルギーは主に太陽光と風力を活用し、氷競技の会場では自然のCO2冷凍システムを使用して炭素排出を最小限に抑えることに成功した。交通インフラの整備では、競技会場をつなぐ新しい高速鉄道や燃費の良い車両が導入され、電気自動車や水素燃料電池車が活用された。