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松岡修造氏インタビュー

スポーツができなくなる日。

環境について真剣に考えなければならない時代になった――。これは誰もが知っていることですよね。どの程度切実に感じているかは人によって違うだろうけれど、みな、このままではいけないことは分かっている。

その中で「なぜあえてスポーツと関係づけて環境のことを考えなければならないのか」と問われるかもしれません。でも答ははっきりしています。自然環境がこのまま壊れていったらスポーツができなくなってしまうから。今のように自然の中でスポーツを楽しむことができなくなる日が来るかもしれない。それだけはどうしても避けたいからです。

屋外でテニスが出来ない街がある。

それを最初に思い知ったのは、現役時代、アジアのある都市で開かれた大会に出場したときでした。

僕はそれまで一度も試合中に棄権したことがなかったのですが、その大会にかぎって、試合途中にドクターストップがかかった。ケガをしたわけでもない、具合が悪くなったわけでもない。なのに脈拍が異常に上がり呼吸困難に陥ったのです。

原因は汚染された空気でした。その大会に出場していた32選手のうち、8名の選手が僕と同じ原因でリタイアしています。思い切り息を吸ってスポーツすることが難しくなりつつある――。それを身をもって体験してしまった。ゾッとしました。

でも、それは決して遠い国の出来事ではないんです。近ごろは、東京でもそれと近い状況を感じることがありますから。「誰かがどうにかしてくれるだろう」ではなく、自分でアクションを起こさなければまずいことになる、それが現実なんです。雪が降らなくなったら・・・

僕が経験したようなことは、多くのスポーツ選手が感じていることなんじゃないでしょうか。

特に強く感じているのは、自然とがっぷり四つになってやるスポーツをやっている人でしょう。たとえばスキーのジャンプ競技。初めて自分の目でジャンプ台から飛び出す選手たちを見たとき、これほどの大自然を体感しながら競技できるなんて、と彼らがとてもうらやましかった。でも、その分、かなり切実な状況に置かれているのですが。

ソルトレイクシティ大会の時に開かれたIOCの環境委員会でのこと。「今、温暖化によって、冬のスポーツができなくなってしまうギリギリのところにきている」とはっきり公言されました。「困ったなぁ」といったレベルはとっくに過ぎている。どうにかしなければ、今すぐにもやれなくなるかもしれないスポーツがある。それをみなさんにもっと知ってほしいです。

マイ・コップで飲む水はおいしいはず。

ではどうするか――。これはもう「落ちているゴミは拾おう」というところから始めるしかないと思っています。眉間にシワ寄せて、大げさに構えても誰もついてきてくれないでしょ。感覚として、自然を壊さないように行動することのほうが「気持ちいいし、楽しい」となるのがいちばんいいのですけれどね。

個人的には、僕が開いている子供向けのテニス・クリニックで「ゴミを拾ってごらん。いいことをした感じがするでしょ」といった話をしています。子どものうちから叩き込んでおけば、三つ子の魂百までも・・・・・・になるのではないかと。

正直なところ、ヨーロッパなどに較べると日本はまだまだです。あちらではゴミ問題やリサイクルが生活にしっかり根付いている。声高に言わなくても誰もが普通のこととしてやっているんですよね。スポーツの合間にドリンクを飲むときでも、紙コップなどは使わない。みなマイ・カップ持参です。「だって、紙コップなんかよりずっとおいしく感じられるじゃない」と言われる。環境問題が個人の快不快にダイレクトにつながっているんです。


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