コラム/インタビュー

アスリートのためのカンタン栄養学

我々が、カラダの外から物質を取り入れ、成長や活動に役立たせることを栄養という。 栄養になるのは何かといえば、普通は食品や飲料だと思うだろうが、点滴やサプリメントも栄養なのである。でも、点滴ですべての栄養を摂ってスポーツするなんてできないし、やっぱり食べたり飲んだりすることは楽しい。それに、噛むことでアゴや歯が発達し、味覚も発達するし、胃腸での消化によって内臓も鍛えられる。つまり、食べることはカラダを発達させ、最近では脳も発達させるといわれているんだ。 そこで、この連載では「アスリートがしっかり食べること」の大切さを見直していこうと思う。

PROLOGUE

エネルギーのバランスでウエイトコントロール

スポーツをして食事をして、それでベスト体重をキープできているならそれは理想的だ。勉強、仕事、スポーツで消費したエネルギー量と、栄養によって摂取したエネルギー量とが、見事に釣り合っている状態だからだ。このエネルギーのアウトプットとインプットのバランスを崩すと、理論的には、体重が減ったり増えたりする。これはわかるよね。

2002年6月の日韓ワールドカップ。ボクは日本代表の栄養アドバイザーとしてチームと共に行動していた。どんな仕事をしていたかというと、宿泊先で出される食事メニューをチェックして、サッカー選手としてワールドカップを戦うのにふさわしいメニューにすること、選手が日常使うサプリメントと試合時のエネルギー補給用サプリメントをコーディネートすること、栄養に関する個人的相談に乗ること、そして選手の体重変化からコンディションをチェックしてアドバイスすることだ。

悲しいとき・・・、
あっという間に体重が8キロも増えていたとき〜

このチームで、ボクだけ体重が8キロも増えた(写真参照)。決して怠惰な生活をしていたわけじゃない。選手は1日に平均5200キロカロリーの栄養を摂取する。これは、運動を特にしない同世代の人の2日分にあたる量だが、だれも体重は変化しなかったから運動量のすごさがわかる。ボクは、職業柄すべてのメニューを味見し、選手用にモデルメニューを組んで選手に見せては、これを「完食」した。一度取った食べものは残せない世代だ。


ワールドカップ・トルコ戦翌日の
増量した筆者

一方、運動は、ジョギングしようとすると、合宿地の「北の丸」には総勢1000名の警備員がいて、木の陰からスッと出てきて「ご苦労さまです」と挨拶される。これがもう10秒おきくらいなので、おちおち走っているわけにもいかない。というわけで、毎日毎日約2000キロカロリーのオーバーが30日ほどあり、トータルでは60000キロカロリーのオーバー。体脂肪1キログラムは約7000キロカロリーに相当するので、60000÷7000で、理論的にもほぼ8キロ体脂肪中心で増えたことになる。ストレスと緊張で、太ったことにも気がつかなかった。

ワールドカップが終わった後、皮肉にも10月の日本肥満学会の発表者に指名された。肥満学会に肥満で登場、というわけにはいかないので、発表までの4ヵ月で元に戻した。もちろん運動したし、サプリメントも活用した。

デブの話はこれくらいにして、アスリートの皆さんは、運動は充分している。だから食べ方ひとつでカラダをつくったり、ウエイトコントロールができるはずだ。

栄養バランスって言うけれど

さて、その食べ方といえば、栄養バランスという言葉がある。タンパク質とか、ミネラルとか、ビタミンとかがバランスよく摂れているかどうかなんて、栄養学を勉強した人でないとわからないよね。ところが、テレビで、栄養士やキャスターが「栄養バランスに気をつけましょう」と言うと、みんな「ふんふん」なんてうなずいている。「どう食べればいいかわかってるの?」と聞いてみたいね。

でも大丈夫、基本さえ覚えれば実は簡単なことなんだ。そこで、次回はバランスの良い食事の揃え方について、コンビニやファミレスでの選び方も含めて解説しよう。

杉浦 克己(すぎうら かつみ)

日本オリンピック委員会 情報・医・科学専門委員会科学サポート部会員。ザバス スポーツ&ニュートリション・ラボ所長。明治製菓株式会社に勤務するかたわら、日本陸上競技連盟科学委員、全日本柔道連盟科学研究部員や2002年日韓ワールドカップ栄養担当を務めるなど、専門分野で幅広く活動している。1998年にスポーツ栄養の研究で東京大学より学術博士を取得。近著に『勝つカラダをつくる!プロテインBOOK(スキージャーナル 2000)』がある。


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