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オリンピアンズ・ストーリー

オリンピアンズ・ストーリー

ノルディック複合の日本代表として1992年のアルベールビルオリンピック冬季大会に出場し、団体で見事金メダルを獲得した三ケ田礼一さんに、前回は「ウインタースポーツと環境問題」についてご執筆いただきましたが、今回のテーマは「スキー人口の減少とグローバル化」。どうすればウインタースポーツファンが増えるのか、原因と展望を考えていただきました。

- スキー人口増加を目指して -

若者たちのスキー離れ

前回は地球温暖化によって、徐々に降雪量が減り、スキーをする環境が悪くなってきている話を書きましたが、2回目はスキー人口の減少について触れたいと思います。
ちょうど私が1992年にアルベールビルで開催された第16回オリンピック冬季競技大会に出場し、ノルディック複合チームが金メダルを獲得した頃をピークにスキー人口は減っております。現在では当時の半分以下という状況となってしまいました。

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第16回オリンピック冬季競技大会(1992/アルベールビル)より。写真左から三ケ田礼一さん、荻原健司さん、河野孝典さん。

私は現在、岩手県にあるホテルに勤務していますが、そこで感じることは若いお客様が減っていること。年々、少子化にともない日本の人口が減ってきていることも要因にあげられるとは思いますが、やはり今は若い人たち向けの遊びが多様化してきているからでしょう。身近で楽しめる遊び場所が増えてきた昨今、若者たちは高いお金をかけてわざわざ遠くにまで出かけ、スキーを滑るようなことはしなくなってきているようです。

おまけに都会の若者だけに限らず雪国といわれる地域でもスキー離れは起きています。私が幼い頃、雪国ではどこの小学校でもスキー教室が行われていたものですが、現在では金銭的な面から廃止している学校も少なくないと聞きます。岩手県でも“スキー道具を持っていない”、“スキーをやったことがない”という子供たちも増えているのです。

グローバル化する日本のゲレンデ

昔に比べ、日本人のスキーに対する楽しみ方も変わってきているような気もします。一昔前は日本人特有の勤勉さから、スキーを滑るのにも一生懸命になってしまい、楽しむために来るスキー場に疲れに来ている人が多かったのです。しかし最近では、欧米のようにスキーは遊びに来るところ、リフレッシュしに来るところだという認識が深まったせいか、午前中何本か滑ったら、午後はビールなどを飲みながらゆっくり過ごす方などが増えてきています。また長期滞在される方には食事の面でも飽きがこないように、ホテル側もイタリアンや中華、フレンチ、和食などバラエティにとんだ料理を用意するなどの企業努力も行われています。

また最近のスキー客の傾向として多く見られるのは、中高年層の増加です。今の50代、60代はスキーブームを支えてきた世代。子育てや仕事に追われていた時期にはスキーから遠ざかっていたけれども、定年を迎え、子育てからも解放された年齢になったと同時に再びスキーに戻ってきている感じがします。当時のスキーブーム時代はファッションからスキーに入られた方も多く、毎年ウエアも道具も新しいものでないとダメだと思われている方もいらっしゃるようですが、スキー場によっては昔のスキー板でも無料で整備してくれるところもありますので、あまりかたちにとらわれずスキーを楽しんで頂きたいと思います。

それからここ数年、よく見かけるようになったのは外国からのお客さまです。ゲレンデを見渡すと非常にグローバルな印象を受けます。最近、北海道のニセコがオーストラリア人に人気で、オーストラリア村なるものが出現したというニュースをテレビや雑誌などで目にされた方もいらっしゃると思います。これは北海道のパウダースノーに惹かれたオーストラリア人が多く来場したことによるムーブメントですが、私の勤務先でも似たようなことが起きています。

東北のスキー場には冬になると韓国からたくさんのお客様がいらっしゃいます。といいますのも韓国は今、大変なスキーブーム。韓国にもスキー場はあるものの、数としては少ないことと、東北も北海道に負けないぐらいのパウダースノーなので、ここ数年は韓国の方の来場者が増えているのです。
このような光景を目の当たりにすると我々スキーに携わる人間は、これからは日本だけでなく、海外にも目を向けなくてはいけないと実感しています。

トリノオリンピックに出場する選手に期待

やや後ろ向きの話ばかりになってしまいましたが、悪いことばかりではありません。少しずつ景気がよくなってきているせいでしょうか、昨年2月と3月の来場者数は前年比を上回りましたし、今年はスキー用具の売れ行きも好調と聞いています。これはスキー場での楽しめるアイテムを増やしたり、さまざまなイベントを行ってきたことも功を奏してきたのだと思います。

加えて2006年2月10日からは第20回オリンピック冬季競技大会(2006/トリノ)が行われます。1998年の長野オリンピックの直後には日本人選手の活躍に刺激され、ゲレンデにもたくさんの人が訪れました。やはり日本人の選手が活躍すると「自分たちもやってみたい」という意識が働くのでしょう。
トリノオリンピックでもぜひ、日本人選手が活躍することを期待しています。それがスキー人口の増加、そして日本のスキー場の発展につながっていくと思います。

写真提供:アフロスポーツ


三ヶ田礼一
三ヶ田礼一(みかたれいいち)
1967年(昭和42年)1月14日岩手県安代町生まれ。青森県東奥義塾高等学校から明治大学へ進学。1989年リクルート入社。1992年アルベールビル冬季オリンピック冬季競技大会(1992/アルベールビル)でノルディック複合団体に出場し、金メダルを獲得。現在、岩手県にあるホテルで営業を担当。