コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

アスリートメッセージ スキー・フリースタイル 上村愛子

新たな武器とともに、バンクーバーに挑む

文:松原孝臣


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“愛子スマイル”でインタビューに応じる

4月の下旬、上村愛子は東京にいた。都内での合宿を経て、4月末からはフィンランドでの雪上合宿に臨む。
スキー競技の選手にとって、本来ならまだオフであっておかしくない時期である。上村自身、こんなにも早い時期に雪上合宿に出かけるのは初めてだと言う。

一方で、こうも語った。
「自分としては早く始まることはいいですね。大会が近いわけではないのでスキーの基本をしっかりやることが目的の合宿なのですが、早い時期に基本の練習ができるのは冬に向けて貴重です。それに、10日間くらいオフをとっていたので、もうそろそろ体を動かしたいというのと、規則正しい生活をしたいという気持ちになっていましたから」

現在の充実ぶりが、その言葉にうかがえるようだった。
3月上旬に福島県猪苗代で行なわれた2009年FISフリースタイル世界選手権大会で、上村はモーグル、デュアルモーグルともに金メダルを獲得した。フリースタイル世界選手権での日本人選手の金メダルは史上初のことだった。この結果を受けて、全日本スキー連盟の規定により、バンクーバー冬季オリンピックの代表にも内定した。

しかも内容が圧巻だった。一人、次元が違ったといってもよい。
3月7日のモーグルでは、予選、決勝ともに他の選手を寄せつけない速さで圧倒する。猪苗代のコースは、傾斜が急なこともあり難コースといわれるが、試合当日、気温が冷え込んだことで、前日までとはコースのコンディションが変化。午前中の予選では、第1エアの手前からランディングのあたりでミスする選手が続出した。トップクラスの選手の中にも、スキー板を横にずらすなど安全に滑ろうとする傾向が見られた。
この試合を振り返って、上村は「恐怖心との戦いだった」と表現する。

「地元だから緊張するというのももちろんあるけれど、それよりもコースに負けないように、というところでの緊張が高かったですね。もともと難しいコースですけど、試合前日の公式練習の最後に滑った状態と試合当日の朝では、雪の硬さが全然違っていました。でも、コブが硬いから板を横にしちゃおうかなという気持ちを絶対起こさないようにしよう、絶対ここに負けちゃいけないんだと思っていました」


2009年FISフリースタイルスキー世界選手権、モーグルとデュアルモーグルの2冠を達成
(写真提供:フォート・キシモト)

決勝のスコアは24.71点。2位のトリノ冬季オリンピック金メダリスト、ジェニファー・ハイル(カナダ)ですら22.88点と、他の選手を大きく引き離す高得点で優勝。翌日に行なわれたデュアルモーグルでも予選は23.17点。20.80点で2位のマルガリータ・マーブラー(オーストリア)に大差をつけて首位に立ち、トーナメントに進むと決勝で伊藤みきに勝利し、見事2冠に輝いたのである。
前シーズンの2007−2008年にはワールドカップで5連勝し、年間総合優勝を達成している。それに続いての世界選手権制覇である。
長いキャリアにおいて、2シーズンにわたり最高の結果を残したのだ。この強さを支えているのは、技術面でいえばターンの進化にある。

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