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アスリートメッセージ

アスリートメッセージ 水泳・競泳 松田丈志

最終的には
200mバタフライのスペシャリストになりたい

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表彰式後、喜びを分かち合う松田選手と久世コーチ。  写真提供:フォート・キシモト

13日午前の決勝は、平常心で臨む事ができた。誰もが実力はそれほど変わらない。他の選手のことは考えなかったが、ひとつだけ、「後半にフェルプスとの差を詰められたらいいな」とは思った。

「ジャパンオープンの時より、少し抑えた感じで入っていこう」というのが、思い描いた泳ぎだった。だが舞台はオリンピックの決勝。アドレナリンも出てきた松田は、100mを予定より少し速い54秒41で通過した。

「3位で100mをターンしたあたりで『メダルはいったな』と思いました。フェルプスは当然のように前に出てたけど、チェーはすぐ後ろにいたから、『これはチェーとの(メダルの)色争いになるな』という感じでいました」

150mを折り返す手前でチェーには抜かれて4位に下がったが、ターンをしてから3位を確保。最後まで競り合って3位でゴールすると、記録は1分52秒97の日本新記録だった。


北京オリンピック200mバタフライ決勝。 写真提供:アフロスポーツ

「自分では1分52秒を目標にしていたけど、実際に出るとは思っていませんでしたね。アテネオリンピックの後、2年間は結果の出ない悪い時期もあったけど、コツコツ努力をしてきて良かったと思います」

レース後、松田は喜びに満ちあふれた顔で話していた。

「チームでやっていて、練習相手がいるというのを羨ましいと思った事もありますね。でもアテネオリンピックまで久世コーチと二人三脚で無我夢中にやってきて、そこで悔しい思いをしたんです。僕も悔しかったけど、コーチも同じくらい悔しかったと思う。だから北京オリンピックまでは同じスタイルを貫き通して結果を出そう、こういうスタイルを周りに認めさせたいという思いもあったんです。その中で僕も成長できてきて、コーチとの接し方も変わってきたと思うし。コーチは今でも怖い人ですけど、ふたりで頑張って結果を出せたというのが嬉しいですね」

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金メダリストのマイケル・フェルプスと健闘をたたえ合う松田選手。
写真提供:アフロスポーツ

松田は北京オリンピックで、「今持っているものはすべて出した」という満足感を得た。この4年間でやってきた事にも、「ああすれば良かった」というような思いはなかった。だが、もう少し記録を伸ばせるんじゃないか、という気持ちもある。それがある限りは、競技を続けるべきだと言う。

「今24歳だから、僕らの世代が(次のロンドンオリンピックを目指すかどうか)一番迷う世代じゃないかという気がするんです。でも、貴司さんはアテネオリンピックで26歳だったから、貴司さんのアテネオリンピック+2年と考えればやれそうだなと思ってるんですよ。だから、ちょっと余裕を持って2年間をすごし、その先の2年でしっかり合わせられるくらいになれば行けるかなと。でも、1500m自由形はもう考えていませんね。14分台は次の世代に任せて……。400m自由形と200mバタフライの両方で記録を上げていって、最終的には200mバタフライのスペシャリストになれたらいいな、と思いますね」

北京オリンピックの400m自由形で朴が優勝し、張が2位になった。「あれを見て、そこに自分も加わってアジア勢で表彰台を独占できれば面白かっただろうな」という思いが頭の中を過ったと笑う。

「4年後を考えると、世界記録は1分50秒とかの世界になってそうだな、っていう気はするんです。でもその中で、フェルプスとの差をどこまで詰められるかというのも楽しみのひとつですね」

松田は晴々とした表情でそう言った。

(2008.11.14掲載)

インタビュー風景
松田選手からのビデオメッセージ!!
「北京では応援ありがとうございました!」

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松田丈志(まつだ たけし)/水泳・競泳

1984年6月23日生まれ。宮崎県出身。ミズノスイムチーム所属、中京大学大学院2年。
4歳で「東海スイミングスクール」に入り、現在のコーチである久世由美子氏に出会う。高校3年次には日本選手権に出場し、男子800m自由形で優勝。中京大学1年次には400m、800m、1500m自由形と200mバタフライで日本選手権4冠を達成し、2004年アテネオリンピックには200mバタフライと400m、1500m自由形に出場した。2005年世界選手権モントリオール大会では200mバタフライで銀メダルを獲得。2008年4月の日本選手権で北京オリンピック出場権を獲得し、6月のジャパンオープンでは1分54秒42の日本記録を樹立。2008年8月に開催された北京オリンピックでは200mバタフライと400m、1500m自由形に出場し、200mバタフライで銅メダルを獲得した(1分52秒97/日本新記録)。



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