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アスリートメッセージ

体操・体操競技 内村航平

北京オリンピックの目標は、
個人総合で決勝へいくこと。

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2007年ユニバーシアード競技大会で団体優勝、ゆか優勝、跳馬3位に輝く。写真提供:アフロスポーツ

そんな彼が、もう一段成長するキッカケとなったのは、大学1年生の2007年に出場したユニバーシアード競技大会だった。チームの団体優勝に貢献し、ゆかで1位、跳馬で3位と3個のメダルを獲得した。

「確か、9月の世界選手権へ出場するには、1ポイントくらい足りなかったんです。でもあの年は世界選手権より、8月にあったユニバーシアードに出られればいいなと思っていたんです。でもあの大会での収穫は、メダルや結果じゃなかったんです。代表に入ってからの合宿で、自分の弱い部分が見えてきたりして。試合前の練習だったり気持ちの持ち方など、的を得た練習ができているんだろうか、という気持ちになれたんです。僕はすぐ諦めるところがあったんで。練習でも『今日はダメだな』と思ったらやらなかったし、きついこともあまりやらなかったから」

帰国後はその短所を克服しようと、まずは練習で諦めるような気持ちを徹底的に封印した。その効果で調子が上がり、絶好調で臨むことができたインカレで初タイトルを獲ることができたのだ。

競技に対する気持ちも変化してきた。

「ユニバの頃までは、得意のゆかで一番を獲れればいい、という感じだったんです。だからオリンピックも、ゆかとか跳馬という得意種目でいって、団体と種目別を狙うというイメージを持ってたんですね。でもインカレで優勝してからは、『体操は6種目だ。どうせならオールラウンダーで世界チャンピオンになりたい』という気持ちが強くなってきました」

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インタビュー風景。初めてのオリンピックへの思いを語る内村選手。

すべての種目を意識すれば、それまでより厳しい気持ちで練習に取り組まなくてはいけない。とりあえずは、得意な種目は伸ばしていって、弱い種目はできることを確実にやって、きれいに着地まで持っていこうという目標を立てた。その意識改革が、今年4月の第2次選考会を1位通過するという結果につながったのだ。

「代表に入ったら、全種目出るつもりで弱いところも強化していこうと思っていたんです。日本では代表になるためにも6種目できないといけないけど、さらに世界で戦っていくためには、それ以上の努力をしなければいけないなと思っていますから。だから今は、ゆかで金メダルを獲りたいなんて考えていません。個人総合で決勝へいくことが目標です」

体操を本気でやろうと思うようになった高校1年生の時にテレビで見たのが、アテネオリンピックだった。団体で優勝した日本チームの演技を見て「日本が一番きれいな体操をしている。やっぱりきれいなものが勝つんだな」と思った。

「中国は強いと思うけど、日本も中国に真似のできない美しさを持っていますから。日本の売りはそこだと思うから、そういうところを世界にアピールしていって、なおかつ満足いく演技ができれば結果はついてくると信じてるんで。だから勝ち負けはそんなに気にしていませんね。とりあえず団体はノーミスでやって、自分のひねりの美しいところを見せたいです。中国人の観客も感動して、拍手をしてしまうような演技をしたいですね」


練習風景。美しい演技で世界チャンピオンを目指す。 写真提供:アフロスポーツ

世界選手権も経験していない内村は、北京が初めてのシニアでの日本代表だ。だが、オリンピックもただの大きな大会としか感じていないという。「テレビで見てる人は自分たちがすごく緊張していると思うだろうけど、多分、普段の大会の緊張感と変わらないと思うんです」と。

「これまで僕は、緊張してしまって体が動かなくなるという経験はないんですよ」と、平然とした表情で言う。

持ち味の冷静さを発揮してオリンピックというものをしっかり経験すること。そしてそれを次のロンドン大会へつなげることが、北京での彼自身の最大の目標だ。

若きエース候補のオリンピックロードは、北京からスタートする。

(2008.7.31掲載)

内村航平(うちむら こうへい)/体操

1989年1月3日生まれ。長崎県出身。朝日生命体操クラブ(東洋高校)を経て、現在、日本体育大学所属(2年)。
3歳から両親が運営する「スポーツクラブ内村」で体操を始める。
東洋高校2年次に出場した全日本ジュニア体操競技選手権大会で個人3位、全国高校体操競技選抜大会で個人優勝、3年次には高校総体で個人2位、全日本ジュニアで個人優勝、全日本選手権では個人8位に輝き、高校生にしてナショナルメンバーとなる。 日本体育大学入学後、ユニバーシアード競技大会で団体優勝、個人ではゆかで優勝、跳馬で3位になり、全日本学生体操競技大会では個人優勝を飾る。そして2008年4月に行われた第29回オリンピック競技大会体操競技第2次選考会で1位、5月に行われたNHK杯兼第29回オリンピック競技大会体操競技日本代表決定競技会で2位になり、初のオリンピック代表に選出された。


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