コラム/インタビュー

アスリートメッセージ

アスリートメッセージ 大声で言う気はないけど、やっぱり北京ではメダルが欲しい。周りの人たちに何かを形で返すとしたら、やっぱりメダルしかないから。

文:折山淑美


世界選手権で銀メダルを獲得。でも、満足はしていない。

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2007年9月 世界選手権
(写真提供:アフロスポーツ)

2007年9月の世界選手権で、男子グレコローマン12年ぶりのメダル獲得となる2位になり、2008年北京オリンピックの代表に内定した60kg級の笹本睦。大会から2ヶ月ほどが過ぎた彼の表情には、満足感のようなものはなかった。

「終わってみたらすごい悔しかったですね。満足はしてない・・・・・・。決勝では多分、最低でも2位ということもあって、ちょっとホッとした部分もあったと思うんです。それに、決勝の相手のベディナゼ(グルジア)にはちょっと分が悪いかなというのも、自分の中のどこかにあったと思うんで。そこで力を出し切れなかったというのがあるんですね」

第1ピリオドは1-2で取られた。だが第2ピリオドは3-0で取り返した。ローリングで2ポイントを取った時には「行けるんじゃないか?」と感じた。だが遅かった。

第3ピリオドはポイントを先取、ラスト30秒をグランドの防御姿勢で臨んだ。だが俵返しで返されて敗れたのだ。もし、最初から「いける!」という気持があれば、違う展開になったのではないかと反省する。

大会の組み合わせには恵まれていた。過去3連敗しているディアコヌ(ルーマニア)は反対のブロックに回り、準決勝で対戦するだろうアテネオリンピック王者・鄭智鉉(韓国)のブロックには実績のある強豪が固まっていた。だが笹本は、楽に勝ち上がれるとは考えていなかった。4回戦で当たる予定のクリメント(ハンガリー)は彼がやりにくいと思っている選手だったからだ。

「その相手がすごく苦手だったんです。第1ピリオドを相手に取られて、第2ピリオドもすごい余裕な顔をしてきたんです。その隙があったからフォール勝ちができたんです(笑)。ベスト8に入ってオリンピック出場枠を取るという最低限の目標をクリアできてホッとしたけど、準決勝の韓国の選手は練習でやったことはあるけど試合は一度もなかったから、戦いたかった相手なんです。金メダルを獲った選手がどんなもんかな、というのもあって。やっぱり強かったけど、それほどでもなかったですね(笑)」

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練習風景。目に気迫が宿る。

準決勝、笹本は第1ピリオドを取ったが第2ピリオドを取り返され、第3ピリオドも相手に攻撃されて劣勢だった。だがその攻撃を耐え抜いてラストポイントを獲得して勝利したのだ。

「決勝の相手はずっと2位、3位できてた選手だし、去年も2位ですごく悔しい思いをしていたから今年に懸けていたと思うんです。それに対して僕は前回1回戦負けだから、その差じゃないですかね。向こうも多分、僕が相手だったから『チャンスだ』という思いもあったと思うんですよね(笑)」

金メダルと銀メダルを分けた差は、勝利に対する執着心の差だったといえる。


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