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アスリートメッセージ

アテネオリンピック前には初のナショナルチーム入り。オリンピックの代表選考からは落ちてしまったが、この頃から世界が見え始めたという。
「初めて日本代表のオールを持ったときは、ワクワクしました。重みもありましたし、やっぱり今までとは違いました。2005年もナショナルチームのメンバーに選ばれ、3カ月間ギリシャを拠点に行われた強化合宿に参加することになったんですが、そこでイタリア人のジャンニ・ポステリオーネコーチから指導を受け、世界トップレベルに達するような練習をしたんです。コーチは常に世界一を目指し、そのためにはどうすればいいか、きちんとノウハウを持っています。僕たちが疑問に思ったことにも納得がいくまで答えてくれます。ポステリオーネコーチの元で強化プランをこなすうちに結果が出るようになりました。それが昨年のワールドカップ2位という成績です」

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2005世界ボート選手権大会より(左・須田選手、右・武田選手)。
写真提供:アフロスポーツ

世界との差は縮まってきたと言われても、まだまだヨーロッパの選手たちは脅威の存在なのだそうだ。
「ボートは上達するまでに時間がかかる競技と言われています。日本では高校の部活動で始めるのがほとんどですが、イギリスやデンマークなど強豪国は地域スポーツとしてボートが盛んです。彼らは始める時期が日本よりも早いので、同じ年齢でも競技歴が長いんです。しかもヨーロッパの選手は手足も長いでしょう。ボートは手足が長いことは有利なんです。体型、体格の面で彼らを追い抜くにはフィジカル面の向上とテクニックを磨くしかないと思っています」

トレーニングは1日18〜20kmの距離を漕ぐことが中心。雷ではない限り、雨や風が強くても練習は中止にならない。試合も同様だ。屋外スポーツは天候によって記録が左右されるため、悪天候もまたもう1人の敵のように思える。
「僕も以前は天候が悪いと嫌だなと憂鬱になっていました。逆風だとオールが重たくて、前に進みませんからね。でも最近は自然の中でのスポーツだと認識できているので、天候に気持ちが左右されるようなことはなくなりました」

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2006世界ボート選手権大会会場にて(左・武田選手、右・須田選手)。
写真提供:坂本剛健

どの競技にも苦労はつきものだが、須田選手いわく、ペアを組む選手と息を合わせることにも尽力するそうだ。
「今、一緒に組んでいる武田大作選手は大ベテラン。ダブルスカルではクルー(後ろに座る選手)がストローク(前に座る選手)にペースを合わせるのが基本なんですが、僕の場合、体力的、能力的に合わせられないこともあって・・・。とにかく息を合わせるために2人でひたすら漕ぐしかないんですが、練習が終わってから話し合うことも多いです」

また、男子軽量級ダブルスカルには2人の体重の合計が140kgという規定がある。武田・須田ペアの場合、1人が70kgに調整するのだが、須田選手は181cmで72kg。大会前には減量も強いられる。
「僕は普段、よく食べるので食事制限は正直、辛いですね。でも食べないわけにいかないので、量を減らし、とにかく動いて代謝をよくするようにしています。食事制限も最初は大変ですが、慣れてくると体重が落ちてくるのが楽しみにもなります。でも海外で体重を調整しなくてはいけないときは大変ですね。特にヨーロッパはおいしいものが多いので」
と笑いながら話す須田選手。

減量も確かに辛いが、やはりスポーツ選手にとって最大の敵は怪我だろう。須田選手も怪我に悩まされ、競技を辞めようと思った時期もあったそうだ。
「2年前、腰を怪我したんです。ボート選手は腰を痛めることが多いんですが、とにかく痛くて、気持ちも萎えました。その時は心も弱くなり、辞めようかなと思いました。でも痛みがひき、気持ちが前向きになるまで休んでいたら、またボートが楽しくなって。やっぱりボートから離れることはできませんでした」
須田選手は非常にマイペース。言葉を丁寧に選び、決して物事を断定しないところにもその人柄は垣間見られる。

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2006世界ボート選手権大会会場にて。 写真提供:坂本剛健

そんな須田選手の目下の目標は、北京オリンピック出場。
「来年の世界選手権はオリンピックの予選です。それに向けて今年行われるアジア大会でもぜひ結果を出したいです。オリンピックに行ける自信は今のところまだないけれど、狙っているという気持ちには自信があります」
須田選手が迎える現実のドラマはきっと輝かしいものに違いない。

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須田貴浩(すだ たかひろ)

1981年1月6日生まれ、181cm、72kg。
宮城県出身 石巻高等学校から中央大学ヘ進学。現在、アイリスオーヤマ所属。 2005年ワールドカップ第1戦2位、2006年ワールドカップ第1戦3位、2005年世界ボート選手権大会8位。2006年世界ボート選手権大会7位。


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