第29回オリンピック競技大会(2008/北京)

カヌーのみどころ

日本代表選手団

フラットウォーターレーシング(FWR)競技

(1)出場権獲得までの過程

北京大会では、アテネ大会と同様、オリンピック前年の世界選手権大会(ドイツ・デュイスブルグ)で6位(種目によっては8位)までに入った艇の国とオリンピックの年に開催される大陸別予選会(CQFC-Continental Qualification)で1位になった艇の国に出場資格が与えられる。一人の選手は複数の資格を取ることができず、1名につき1枠のみの取得となる。なお、アジアの大陸別予選会は2008年5月9日〜11日、石川県小松市の「木場潟カヌー競技場」にて開催された。

前年の世界選手権で出場権を得られなかった日本代表チームは、アジア地区のCQFCに全てを賭け、JISS(国立スポーツ科学センター)の研究支援を受けながらポルトガルで2ヶ月、その後、試合会場である石川県小松市でかつてない長期合宿に取り組み、このCQFCに臨んだ。カヌーといえば伝統的にヨーロッパ勢が強豪ではあるが、近年、アジアでも中国が急速に力をつけ、また旧ソ連の中央アジア諸国も世界選手権上位に食い込む実力を持っている。アジア地区からオリンピック出場権を獲得するのは容易なことではない。特に、今回出場権を獲得した女子のカヤックにおいては、一次予選で既に資格を得た中国のほかにカザフスタンという強力なライバルがいた。しかし、女子K4の日本チームはスタートから飛び出したまま、その強豪カザフスタンを大差で退けて優勝。会場の木場潟に歓喜の声がこだました。日本女子チームは、予選システムのルールに基づき、4名の選手がK1、K2、K4の3種目にエントリーできることとなった。

(2)今大会の目標

チームボートである女子K4で予選を勝ち4名の出場資格を得たことで、個々の地力にチームとしての勢いが加わった。アテネ大会では9位と入賞まであと一歩だったが、北京では悲願の入賞を果たしたい。そして、すでに世界上位の実力を持つ女子K2においては、メダル獲得を目指したい。予選突破以降、本番までの間にメキシコで2ヶ月の高地トレーニングを積み、さらなる強化と調整を図りながらメダル獲得・入賞を狙う。

(3)日本チームの特徴

エースの北本 忍をはじめ、竹屋 美紀子、鈴木 祐美子の3名がアテネ大会の経験者。これに20歳の久野 綾香が加わり、世界の強豪に近づいてきた。元々スタートダッシュには定評があるが、高地トレーニングによりラスト150mの粘りを強化。スタートのリードをそのままゴールまでもっていけるようにしたい。北本・竹屋のK2においても同様のことを目標とし、確実な入賞とメダル獲得を目指したい。

スラロームレーシング(SL)競技

アテネ大会後、艇の長さに関する規定が4m以上から3.5m以上に変更された。この50cmの違いにより艇のデザインが大きく変わっただけでなく、漕行テクニックも飛躍的に進化した。艇の回転性が大幅に増し、よりアクロバティックでスピーディーな動きが可能になったのである。近年の国際大会は落差の激しい人工コースが主流だが、とりわけ北京オリンピックの会場は世界随一の難コースと言われる。これまでにないダイナミックなレース展開が予想される。

(1)出場権獲得までの過程

SLでは、オリンピック前年の世界選手権大会(ブラジル・イグアス)における上位15カ国(C1は上位10カ国、C2は同6カ国)とオリンピックの年に開催される大陸別予選会(CQFC-Continental Qualification)で1位になった国(同種目ですでに出場資格を獲得している国を除いた順位)に北京オリンピックの出場資格が与えられる。日本勢は、女子K1の竹下 百合子が昨年の世界選手権大会で24位、上位15カ国目に入り、初のオリンピック出場資格を獲得。5月17日〜18日にタイ・ナコンナヨックで行われたアジア最終予選会で残り3種目の出場権を得て、初の全種目参加となった。

(2)今大会の目標

前回のアテネ大会に一人も出場できなかった教訓を活かし、若手の強化に取り組んだ成果が今大会の全種目出場につながった。C2の三馬・長尾以外は全員、ジュニアのときから世界の舞台でもまれてきた経験を持つ。年齢的にはロンドンオリンピックでの活躍が大いに期待されるが、今大会でも充分入賞を狙える。C1の羽根田 卓也が本年のワールドカップ第1戦の予選2本目でトップタイムをたたき出すなど、スピードとテクニックは既に世界トップレベル。実力を存分に発揮して、メダルも目指したい。
一方、C2の三馬・長尾は、国内ではほとんど競争相手のいないこの種目に黙々と取り組み、オリンピック出場を果たすまでに至った。特にここ1年の急成長ぶりには目を見張るものがある。堅実なレース運びを身上に、確実に入賞を狙う。

(3)日本チームの特徴

ポテンシャルの高い若手3人
竹下 百合子、矢澤 一輝、羽根田 卓也の3人は、それぞれ家族そろってカヌーを楽しむ家庭に育ち、幼い頃からスラローム競技に親しんできた。2000年シドニーオリンピック男子K1代表の安藤太郎選手が、早いうちから世界の強豪にもまれる環境づくりを唱えて自らの海外遠征に連れて回った世代でもある。ジュニアの頃より常に国内トップ選手と練習し、世界を意識。高校生のときから日本代表メンバー入りしている点も三人共通。中でもC1の羽根田は2年前から単身スロバキアに渡り、現在はヨーロッパを中心に活動。まだまだレースに好不調の波があるものの、その卓越したテクニックはヨーロッパの強豪国選手からも一目置かれる。一方、大学生になり体格がしっかりしてきた矢澤は、持ち前のスピードに磨きがかかる。竹下も同様に、丁寧な読みと漕ぎに体力的な裏付けを得て地力が増した。

苦労人のC2コンビ
若手3人とは対照的にC2の三馬 正敏と長尾 寛征は高校の部活動で本格的にカヌーを始めた。高校時代の長尾はカヌーポロの選手として活躍、三馬はC1で代表経験もある。コンビを組んで3年の2人は、それぞれよりよい競技環境を求めて苦労した時期や競技で挫折した時期があるだけに、年月以上のコンビネーションを見せる。精神的なタフさと地道な努力、そして互いをリスペクトし合う気持ちが元々身体能力の高い2人を開花させた。現在は、三馬の故郷の徳島県那珂川を活動拠点とし、地元の高校生の指導にもあたる。

(4)他国の有力選手

Tony ESTANGUET(C1選手・フランス・30歳)
2000年シドニーオリンピック金メダル、2004年アテネオリンピック金メダル、2007年世界選手権2位。常にスロバキアのマルチカン選手と優勝争いを演じ、現在オリンピック2連覇中。1996年アトランタオリンピック銅メダリストPatrice ESTANGUETは彼の兄。

Michal MARTIKAN(C1選手・スロバキア・29歳)
1996年アトランタオリンピック金メダル、2000年シドニーオリンピック銀メダル、2004年アテネオリンピック銀メダル、2007年世界選手権優勝。カヌースラロームで唯一、3個のオリンピックメダルを獲得した選手。

Pavel HOCHSHORNER / Peter HOCHSHORNER兄弟(C2選手・スロバキア)
2000年シドニーオリンピック金メダル、2004年アテネオリンピック金メダル、2007年世界選手権優勝。圧倒的な実力を誇るHOCHSHORNER兄弟の三連覇なるか。